日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-74
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卵・受精
ハンギングドロップ(HD)法を用いたブタ卵母細胞体外成熟培地への抗酸化物質添加の検討
*石川 禎将町田 遼介平賀 孔平館 裕希星野 由美種村 健太郎
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抄録
【目的】ブタの体外生産において,卵巣から得られた未成熟卵子から胚盤胞へ発生する割合は約5割と,未だ低いのが現状である。この要因の一つとして,卵胞内で発生した活性酸素種(ROS)による酸化ストレスが挙げられる。酸化ストレスの一つとして知られる過酸化脂質(LPO)は,ROSである過酸化水素(H₂O₂)が脂質の不飽和結合に対して一重項酸素やハイドロペルオキシラジカル等が反応して生成される。ブタの卵母細胞は,他の動物種と比べ,LPOの標的となる脂質(トリグリセリド)を多量に含むことから,酸化ストレスの影響を受けやすいことが推察される。そこで本研究では,ブタ卵母細胞の体外培養系において,作用機序の異なる抗酸化物質を与え,各々の有効性を明らかにすることを目的とした。【方法】実験には,食肉処理場由来のブタ卵巣より採取した未成熟卵母細胞を用い,抗酸化物質のみの作用の解析を行うため,パラクラインの影響を受けず,高スループット性を期待できるHD法での検討を行った。96wellプレートに,NCSU-23培地を10μL/wellになるようドロップを作成し,採取した卵母細胞をHD法によってIVMを行った。IVMはホルモンとdbcAMPを含む培地で22時間し,細胞周期の同期化を行い,卵丘細胞を剥離し,同培地にH₂O₂(70μM)および抗酸化物質であるL-カルニチン,ラクトフェリン,スルフォルファンをそれぞれ添加(0.01μg/mL,0.1μg/mL)し,22時間の成熟培養を行った。IVM後,酢酸オルセイン染色により,核相判定を行い,核成熟率を算出した。【結果】培養液中に抗酸化物質を添加したところ,核相の進行は,controlと比較して有意に改善された。さらに,作用機序の異なるそれぞれの抗酸化物質で,その効果は異なっていた。以上の結果より,それぞれの抗酸化物質を添加することで,酸化ストレス影響を改善することが可能であることが明らかとなり,さらに本研究はブタ卵成熟において,より効果的な抗酸化物質の選択に貢献できると考えられる。
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© 2013 日本繁殖生物学会
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