日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-15
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精巣・精子
繁殖供用開始期の雄牛精子核DNAの特定メチル化可変部位におけるメチル化状態の差異
*武田 久美子小林 栄治西野 景知今井 昭金田 正弘渡邊 伸也
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抄録

【目的】ウシでは概ね生後8.5–14ヶ月で射精を開始し,繁殖供用期へ達する時期には個体差がある。精子形成過程においてDNAメチル化は全体的に進行することが知られており,個体によりその進行に差があるのではないかと考えた。我々は,ウシゲノムのメチル化状態の差異をヒト用DNAメチル化解析チップ(HumanMethylation450 BeadChip,イルミナ社)を利用して評価できることを明らかにし(小林&武田,2016),凍結精液の精子核DNAのメチル化状態の個体差および採取時期の違いを検出可能であることを示してきた。そこで今回,ヒト用チップから得られた解析情報を基に選択したメチル化可変部位について,生後1~2歳齢の黒毛和種雄牛由来精液のメチル化状態の違いを調査した。【方法】生後12~20ヶ月齢の若い黒毛和種雄牛5頭(J1~5)から採取した精液を解析に用いた。また比較として2~13歳齢の黒毛和種雄牛5頭から採取した精液を用いた。ターゲットとするメチル化可変部位は採取時期の違いにより変化したメチル化可変部位(CpG1)および個体差を示した4箇所のメチル化可変部位(CpG2~5)とし,Combined Bisulfate Restriction Analysis(COBRA)法によりメチル化状態の差異検出を行った。【結果】J1~5から採取した凍結精液についてメチル化可変部位のメチル化度に個体による違いが検出された。また,12~20ヶ月齢に採取時期を約半年あけて採取した精液間ではCOBRA法により違いの見られた個体もいた。一方,CpG1は,これまで得られた結果同様に繁殖供用開始期の精液でやや低メチル化を示し,採取年齢の高い精液で高メチル化となる傾向がみられた。以上の結果から,繁殖供用開始期の雄牛における精子DNAのメチル化度の相違はCOBRA法により簡易検出できる可能性が示された。これらメチル化度の違いが凍結精子の受精能等へ及ぼす影響について今後検討を進める予定である。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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