日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-16
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生殖工学
卵細胞質内精子注入(ICSI)後のブタ卵における卵活性化不全の原因究明
*中井 美智子伊藤 潤哉鈴木 俊一淵本 大一郎千本 正一郎野口 純子金子 浩之柏崎 直巳大西 彰菊地 和弘
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抄録

目的>ブタのICSIでは,注入精子による卵活性化誘起効率が低く人為的卵活性化処理が用いられてきた。しかし,依然として胚作出効率は低いため,生理的な卵活性化を誘起させる必要があると考えられる。本研究では,ICSI卵における活性化誘起効率が低い原因を明らかにする目的で,精子内卵活性化因子phospholipase Czeta(PLCzeta)および受精や胚発生に必須と考えられるcalcium-oscillationのパターンに着目した。<方法,結果>実験1)凍結融解後のブタ精巣上体精子(無処理区)から,パーコール密度勾配遠心分離法(Noguchi et al., 2013)によりPLCzetaを有する精子を選別した(パーコール処理区)。パーコール処理区あるいは無処理区精子を各々ICSIし,その後の卵活性化誘起率および胚盤胞形成率を調べた。その結果,パーコール処理区精子をICSIに用いた場合は卵活性化誘起率および胚盤胞形成率ともに無処理区に比べ有意に高い割合を示した(P <0.05)。実験2)次に,無処理区精子を用いてICSIした卵および体外受精した卵のcalcium-oscillationのパターンを比較した。その結果,ICSI後に活性化した卵では体外受精卵と同様なパターンのcalcium-oscillation が生じていた。一方,約半数のICSI卵が活性化に失敗し,その大多数においてcalcium-oscillation は誘起されていなかった。<結論>以上の結果より, ICSI後の卵活性化誘起効率の低い原因の一つとして,ICSIに用いる精子のPLCzeta量が少ない可能性が考えられた。また,卵活性化不全を引き起こす原因として,calcium-oscillationが誘起されていないことが示唆された

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© 2016 日本繁殖生物学会
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