日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-18
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生殖工学
マーモセット精子細胞を用いた顕微授精の基礎技術の開発
*越後貫 成美葛西 秀俊井上 弘貴饗場 篤小倉 淳郎
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抄録

現在,多くの哺乳動物において遺伝子改変が可能であるものの,多くの動物種において,その長い世代サイクルが新しい系統動物樹立の障害となっている。我々は,小型霊長類マーモセットの世代交代短縮をめざし,精子細胞を用いた顕微授精技術の開発を行っている。その端緒として,マーモセット精子細胞の同定,出現時期(月齢)の観察,卵子活性化能の確認,精子細胞の凍結保存を実施した。精巣から分離されたマーモセット精子細胞は,微分干渉顕微鏡下で容易にステージ(step 1 - 8) 分類が可能であった。やや個体差はあるものの,10–11ヶ月齢で円形精子細胞が,そして12ヶ月齢で伸長精子細胞が出現していた。マウス卵子を用いて卵子活性化能の出現時期を確認したところ,初期円形精子細胞(step 1 - 4) は活性化能を持たず,後期円形精子細胞(step 5 - 6) で初めて活性化能が出現することがわかった。分離した精細胞は,マウスなどで用いる 7.5% glycerol および7.5% ウシ胎仔血清を含むPBS(Ogura et al. 1996) に 0.25 M sucroseを加えた液で凍結保存が可能であった。凍結融解後の後期円形精子細胞は,卵子活性化能を保持していた。以上のように,マーモセット精子細胞を用いた顕微授精の実施のための基礎技術は確立したと考えられる。これらの技術をもとに,マーモセット卵子および後期円形~伸長精子細胞を用いた顕微授精を実施する予定である。マーモセットの自然交配あるいは体外受精には1.5–2歳以降の雄を用いるので,本技術が実用化すれば,半年から1年の世代短縮が可能となる。本研究の一部は,AMED 「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」により実施された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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