日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-2
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性周期・妊娠
ウシ子宮内膜細胞における黄体退行制御メカニズムに及ぼす暑熱ストレス (HS) の影響
*酒井 駿介八木 まみ久世 真理子山本 ゆき木村 康二奥田 潔
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抄録

【目的】世界的な地球温暖化に伴い,夏季のウシ受胎率の低下が問題視されており,その一因として夏季のHSがウシの発情周期に影響を及ぼすことが報告されている。発情発現には黄体の存在が密接に関与しており,黄体は子宮内膜から分泌されるPGF2 alpha(PGF) により黄体退行が誘導され,PGE2により維持される。子宮内膜による黄体退行制御のためのPGs産生はoxytocin(OT) およびTNF alpha(TNF)によって調節されるが,この黄体退行制御メカニズムに対するHSの影響は不明である。本研究はHSによる発情周期の乱れの一因を明らかにするために,黄体退行を制御する子宮内分泌機能に及ぼすHSの影響を検討した。【方法】培養ウシ子宮内膜上皮細胞にOT,間質細胞にTNFを添加し,40.5°Cで10時間,38.5°Cで14時間,最後に40.5°Cで10時間培養した。1) 培養上清中のPGE2およびPGF濃度をEIA,2) 間質細胞のPG合成酵素およびTNF受容体mRNA発現を定量的RT-PCR法により測定した。【結果】1) 上皮細胞のPGE2およびPGF産生はOTにより増加したが,HSによる影響は見られなかった。一方,間質細胞においてPGE2およびPGF産生はTNFにより増加し,HS処理によりさらに増加した。また,0.6 nMのTNFを添加した間質細胞においてPGE2/PGF比はHS処理により有意に増加した。2) TNF添加によりCOX2 mRNA発現は有意に増加し,PLA2およびPGES mRNA発現は増加傾向が見られた(P=0.08,0.06)。HS処理によりPLA2PGESおよびTNFR-1 mRNA発現は有意に増加し,COX2 mRNA発現は増加傾向が見られた(P=0.09)。さらにPGES mRNA発現はTNFとHSの同時処理によってさらに増加した。また,TNFおよびHSによるPGFSCBR1およびTNFR-2 mRNA発現の変化は見られなかった。以上のことからHSによる発情周期の変化は黄体退行時の間質細胞における内分泌機能の変化が関与する可能性が示された。HSによるPGES mRNA発現増加によるPGE2/PGF産生比の増加が黄体制御メカニズムに影響したことが原因だと考えられる。

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