日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-35
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生殖工学
マウス胎仔卵巣のガラス化保存と体外培養による始原生殖細胞の高度利用技術の開発
*諸白 家奈子谷本 連佐々木 恵亮林 克彦平尾 雄二尾畑 やよい
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抄録

【目的】哺乳動物の卵巣内に大量に存在する卵母細胞を有効利用するため,未成熟卵母細胞を体外で発育し成熟卵を得る培養技術の開発が試みられてきた。我々は,始原生殖細胞のみを含むマウス胎仔卵巣を器官培養し,その後得られた二次卵胞を卵胞培養することにより,産仔の獲得に成功した(第108回宮崎大会シンポジウム)。しかし,この培養方法は一度に大量の成熟卵の産生が可能であることから,ガラス化保存法を用い,卵巣断片あるいは培養卵胞を保存することで必要に応じて卵母細胞を利用することが望まれる。そこで本研究では,マウス胎仔卵巣をガラス化保存後,体外培養し成熟卵および産仔を獲得することを目的とした。【方法】胎齢12.5日のBDF1マウス卵巣を10% Ethylene Glycol(EG) + 10% DMSOを添加したL15培地で平衡後,17% EG + 17% DMSO + 0.75 M Sucroseを含むL15培地で平衡し,ガラス化保存した。融解は,0.5 M,0.25 M,0.125 M Sucrose溶液で順次行った。融解卵巣はTranswell-COL上で10%FBS 添加αMEMにて器官培養し,培養5–11日目にEstrogen受容体インヒビターICI182,780添加培地で培養を行った。器官培養17日目に卵胞を単離し,Millicell上で5%FBS,0.1 IU/ml FSHおよび2% PVP添加αMEMにて卵胞培養を行った。卵胞培養14日後,卵胞から卵丘−卵母細胞複合体(COC)を採取し成熟培養(IVM)を行い,体外受精(IVF)に供試した。得られた2細胞期胚を偽妊娠雌マウスに移植し,産仔への発生能を解析した。 【結果】器官培養後,卵巣4個から87個の二次卵胞が単離された。さらにこれらを体外で卵胞培養した結果,44.8%の卵胞からCOCが採取され(39/87),IVM・IVF後,21.8%の卵が正常に受精した(19/87)。得られた2細胞期胚15個(17.2%)を卵管移植したところ2匹の産仔を得ることに成功した。以上の結果から,マウス胎仔卵巣の体外成長培養系のガラス化保存技術への応用が可能であることが示唆された。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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