日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-1
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卵・受精
体細胞クローンマウス卵子のDNAメチレーションエラー
*吉岡 匠神長 祐子大畠 一輝加藤 容子小池 佐小林 久人河野 友宏
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抄録

【目的】体細胞クローン技術に認められる産子への低発生率や胎仔・胎盤の形成異常などが知られおり,エピゲノムのリプログラミングエラーに起因すると理解されている。我々は,体細胞クローンマウス精子の包括的DNAメチローム解析を実施し,メチル化異常を検出した。本研究では,卵丘細胞体細胞クローンの卵子を用いて包括的メチローム解析を実施し,雌生殖系列におけるリプログラミングエラーについて検証した。【方法】成熟雌マウス(BDF1)の卵丘細胞をドナー細胞として排卵卵子(BDF1)に核移植して体細胞クローンマウス(n=16)を作出した。作出された体細胞クローンは10–12週まで飼育したのち,過剰排卵処置して排卵卵子を回収しDNAメチローム解析用試料とした。DNAメチローム解析は,PBAT(post bisulfite adaptor tagging)法を用いてライブラリーを作製後,次世代シークエンサー(HiSeq2500,Illumina社)を用いてシークエンスした。DNAメチル化データの比較解析にはMOABSプログラムを用いた。【結果】シークエンスデータをリファレンスゲノム(mm10)上にアライメントしたところ,有効なリード数はコントロール雌マウス卵子では約1.1億リード(20.3%),体細胞クローンマウス卵子では約0.92億リード(13.7%)であった。5 depth以上配列の読まれた領域は全ゲノムに対してコントロール卵子では22.0%,体細胞クローンマウス卵子では16.7%であった。3 CpGサイト以上を含む領域(ただし近接するCpGサイトとは±300 bp以上離れている)を単位に比較解析したところ,有意に高メチル化が認められた領域が167箇所および有意に低メチル化が認められた領域が309箇所検出された。体細胞クローン由来卵子において,生殖系列のリプログラミングを回避したDNAメチレーションエラーの存在が明らかとなった。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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