日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-8
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卵・受精
受精誘導型オートファジーによる脂肪滴選択的分解に関する研究
辰巳 嵩征山本 篤*塚本 智史
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抄録

オートファジーとは,隔離膜と呼ばれる二重膜で取り囲んだ細胞質成分をリソソームでまとめて分解する経路である。オートファジーの主な役割は飢餓時における栄養供給や細胞質の品質管理である。オートファジーによる分解は原則的には非選択的であるが,一部のオルガネラ(例えば,変異したミトコンドリアなど)は,オートファジーの分解基質を介して選択的に排除されることが明らかとなっている。以前に我々は,受精直後に活発に起こるオートファジーが着床までの初期胚発生に必須であることを報告した。一方,卵細胞質には多くの脂肪滴が存在することが古くから知られている。昨年の本大会において,我々は脂肪滴可視化マウスを用いて受精後の胚発生過程で脂肪滴がダイナミックに形態を変化させることを報告した。本研究では,受精後に活発に起こるオートファジーを利用することで,脂肪滴の選択的分解が可能か否か及び胚発生への影響を検討した。野生型(B6)マウス由来の受精卵(受精3~4時間目の1細胞)の細胞質に脂肪滴局在化シグナルを付加したオートファジー分解基質のタンパク質をコードするmRNAを合成後に顕微注入し,胚盤胞期までの胚発生を観察した。その結果,胚発生自体は正常に進行するものの,顕微注入前に細胞質全体に観察された小さな脂肪滴の塊が発生の進行と共に消失することが明らかとなった。また,細胞膜周辺に巨大な脂肪滴の塊と考えらえる構造体が出現することが分かった。現在,この構造体の微細構造とリソソームとの局在について解析している。オートファジーの分解基質を介した受精誘導型オートファジーによる脂肪滴の選択的分解の可能性について発表したい。

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© 2016 日本繁殖生物学会
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