日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-27
会議情報

卵巣
卵胞の発育と顆粒層細胞および卵子のテロメア長の変化
*植田 愛美伊丹 暢彦市之瀬 智也小川 佳織白砂 孔明桑山 岳人岩田 尚孝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[背景・目的]卵胞の発育に伴い顆粒層細胞は急速に増殖する。顆粒層細胞は卵子の発育に必須であり,その数は卵子の質に大きな影響を与える。しかし個体間,もしくは同個体の卵胞間の顆粒層細胞数の多様性に関する知見はなく,卵胞中の顆粒層細胞数を制御する要因は明らかではない。そこで本研究では,細胞増殖に密接に関連するテロメア長と顆粒層細胞の関係に着目し,個体や卵胞ごとの顆粒層細胞数やテロメア長の分布,テロメア長と顆粒層細胞の関係,卵胞の発育に伴うテロメア長の変化について検討した。またテロメア長と細胞内ミトコンドリア数との関係についても調査した。[方法・結果]個体別に採取したブタ卵巣の同一直径の胞状卵胞(4 mm)から顆粒層細胞を回収し,これらの数とテロメア長の比較を行った。テロメア長はTTAGGGを14回繰り返した合成DNAをスタンダードとして用いてリアルタイムPCRにて得た値を,1コピー遺伝子(グロブリン)で得た推定細胞数で除し,算出した。結果,顆粒層細胞数やテロメア長はいずれも卵胞間,個体間に大きな差が観察された。次に個体ごとに同一卵胞を全て吸引し平均顆粒層細胞数を求め,同じく求めた平均テロメア長,平均ミトコンドリアDNAコピー数,それぞれの間で比較を行った。顆粒層細胞数とテロメア長の間には負の相関が認められ,ミトコンドリア数とテロメア長の間には正の相関が認められた。最後に個体別に採取した卵巣の胞状卵胞と初期胞状卵胞(0.5–0.7 mm) 20個ずつから卵子と顆粒層細胞を採取し,テロメア長を比較した。結果,卵胞の発育中に顆粒層細胞のテロメア長は有意に短縮していたが,一方で卵子には変化が見られなかった。[結論]本研究より,顆粒層細胞数やそのテロメア長には個体別,卵胞別に大きな個性があり,テロメア長は発育中に短縮していることが明らかとなった。

著者関連情報
© 2016 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top