日本繁殖生物学会 講演要旨集
第109回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-28
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卵巣
組織切片の三次元構築とライブイメージングによる原始卵胞発育誘導制御機構の解析
*小松 紘司増渕 悟
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抄録

[目的]過去の研究において原始卵胞の発育誘導を促進する因子がいくつか明らかにされているが,組織レベルでの原始卵胞発育制御機構は未だに明らかにされていない。そこで本研究では,H.E.染色を施した組織切片の三次元構築と我々が構築した卵巣組織培養用法を用いたライブイメージング解析によって組織レベルでの原始卵胞発育誘導機構を明らかにすることを目的としている。[方法]生後1日目,10日目,4週齢ICRマウス卵巣の連続切片を作成,H.E.染色を行い,それを元に組織切片の三次元画像を構築し,卵巣内における卵胞の分布変化を解析した。また,卵母細胞特異的に発現する遺伝子oogenesin1(oog1)のpromoterにAcGFP遺伝子を結合した遺伝子とhistone H2BにmCherryを結合した遺伝子をもつトランスジェニックマウスの卵巣を培養,タイムラプス撮影を行い,卵胞発育過程のライブイメージング解析を行った。[結果]三次元構築した画像解析の結果から,生後直後の段階では卵巣中心部分から発達してくる血管の周辺において原始卵胞の発育が誘導されている様子が観察された。そこで血管(血液)が原始卵胞発育誘導のトリガーとなっている可能性を考え,培養液中の血清濃度を5%,10%にして卵胞,血管が共に未発達な生後0日目の卵巣を培養,ライブイメージング解析を行った。その結果,培養下では卵巣中心からではなく,培養液に接する卵巣表面から原始卵胞の発育が誘導され,血清濃度に応じて発育誘導される原始卵胞数が増加することが分かった。in vivoでは血管の発達と相関して原始卵胞の発育が誘導され,培養下では培養液と接する卵巣表面から血清濃度依存的に原始卵胞の発育が誘導されたことから,卵巣組織内における原始卵胞の発育誘導には血管(血清成分)との相互作用が重要であることが示唆された。現在,生後直後の卵巣だけでなく成体マウスの卵巣においても両者の相互作用の検証実験を行っている。

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