【目的】線維芽細胞増殖因子(FGF)は分化,増殖,血管新生などに関与する増殖因子のひとつであり,子宮においてもいくつかのFGFの発現が報告されている。FGF受容体(FGFR)は4種類から構成され,子宮内膜上皮-間質の細胞間相互作用に関与していると考えられている。子宮におけるFGFの機能を解明する上でFGFRの解析が必須となるが,これまでにその発現についてはほぼ報告がない。そこで本研究では子宮におけるFGFシグナル系列の解明を目的にFGFRの発現動態の解析を行った。【方法】初めに子宮組織,培養子宮内膜上皮および間質細胞,培養子宮組織片それぞれにおけるFGFRの発現をRT-PCRにて解析した。次に子宮内膜で発現が確認されたFGFRについての解析を行った。性周期および妊娠初期の子宮におけるFGFRの発現動態を調べるために,子宮組織を用いqPCRにて解析を行った。【結果】RT-PCRの結果,妊娠3.5日子宮組織および培養子宮組織片では全てのFGFRの遺伝子発現が認められたが,培養子宮内膜上皮および間質細胞ではFGFR4の発現は認められなかった。これらの結果から子宮内膜の細胞間相互作用にはFGFR1, 2, 3が重要であり,FGFR4は筋層や血管内皮などで発現していることが示唆された。ついで子宮組織におけるFGFRの発現動態を調べた。その結果FGFR1 mRNAの発現動態は発情前期において有意に高い値を示し,その後の発情後期および初期妊娠期では発現が低下した。一方FGFR2 mRNAは着床前である妊娠3.5日に一過性の上昇を示し,以降は妊娠の進行とともに発現が減少した。FGFR3 mRNAは性周期および妊娠初期における発現の差は認められなかった。以上の結果からラット子宮では全てのFGFR遺伝子が発現しており,FGFR1およびR2のmRNAは性周期および初期妊娠期にその発現が変動することが明らかとなった。これらの結果はFGFR遺伝子がE2およびP4によって発現が制御されている可能性を示唆するものである。