日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-19
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精巣・精子
トリプシン振盪培養法による成熟ブタ精巣からの精原細胞の単離
*増田 英晃広瀬 海里富岡 郁夫高島 誠司保科 和夫濱野 光市高木 優二
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抄録

【目的】我々はブタ精原細胞に特異的なモノクローナル抗体PSS1を作出した(繁殖生物学会,2007年)。PSS1抗体は,ブタ特異的で精原細胞の細胞質および細胞膜を認識する(北信越畜産学会,2012年)。同抗体とFACSを用いて,幼若ブタ精巣より前精原細胞を単離できる(日畜学会,2013年)。また,同抗体と磁性ビーズ(FG-beads)を用いて,幼若および成熟ブタの精巣から高純度で前精原細胞および精原細胞を単離できることを報告した(日畜学会,2016年,2017年)。さらに,昨年のWCRD2017において,MUSE細胞の単離方法を参考にして,幼若ブタの精巣細胞をトリプシン液中で10時間攪拌インキュベーションすることにより95%以上の純度で前精原細胞を単離できることを,免染およびOct4,VASA,GFRα1,PLZF,UCHL-1など精原細胞や幹細胞マーカー遺伝子の発現量で確認し報告した。そこで本研究では,精原細胞から精母細胞,精子まで様々なステージの生殖細胞と様々な体細胞が含まれる成熟ブタ精巣で,幼若精巣と同様のトリプシン処理により精原細胞を単離できるかどうかの検討を行った。【方法】食肉センターにて成熟精巣を採取した。精巣を細切した後,パパイン酵素により精巣細胞を分散さて,赤血球溶解処理を行って細胞懸濁液を得た。精巣細胞を試験管に入れ0.25%トリプシン液中で1時間から24時間まで37℃で振盪しながら培養した。得られた細胞を観察し,PSS1抗体での免染やqRT-PCRにより精原細胞の純度を評価した。【結果】幼若精巣と異なり,10時間のインキュベーションでは体細胞の混入が認められた。しかしながら,インキュベーション時間を24時間まで延長することにより純度が上昇し,成熟ブタでも精原細胞を単離することが出来た。処理する細胞数やトリプシン濃度,振盪方法など種々条件を最適化する必要が認められた。

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© 2018 日本繁殖生物学会
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