日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-79
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ポスター発表
凍結希釈液の浸透圧および糖組成がイヌ凍結融解精子に及ぼす影響
*竹内 絢香緒方 和子菅根 尚子長谷川 真弓芦部 詩織長尾 慶和
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抄録

【目的】盲導犬等の優れた遺伝資質を有するイヌの繁殖および育種改良に対し,凍結精液を用いた人工授精が有効と期待されているが,現状ではイヌ凍結融解精子は質の低下が著しい。我々はこれまでに,イヌ凍結融解精子の質の向上を目指して種々の検討を行ってきた。今回は,凍結希釈液の浸透圧および糖組成について検討した。【材料と方法】ラブラドール・レトリバー種成犬より精液を採取し,卵黄,トリス,クエン酸および抗酸化剤を含む一次希釈液,ならびに耐凍剤を含む二次希釈液により希釈・凍結した。実験1 希釈液の浸透圧は,塩化ナトリウムを用いて180, 230, 280, 330および380 mmol/kgに調整した。融解24 hの運動活性および生存指数の経時変化,ならびに融解直後の先体保有率および12 h後のフローサイトメトリー(FCM)によるミトコンドリア(MT)活性を評価した。実験2 実験1の希釈液をベースとして糖類を添加し,希釈・凍結した。添加する糖類は,フルクトース(F),ラクトース(L)およびラフィノース(R)とした。無添加区(対照区)およびFL,FR,LRならびにFLRの各実験区を設定し,浸透圧は全て330 mmol/kgに設定した。融解36 hの運動活性および生存指数の経時変化,ならびに融解直後の先体保有率および24 h後のFCMによるMT活性を評価した。【結果と考察】実験1 活性+++率および生存指数は,融解直後から12 h後にかけて,330 mmol/kg区において180 mmol/kg区と比較して高かった(P<0.05)。先体保有率およびMT活性は,330 mmol/kg区で他区と比較して高い傾向が見られた。実験2 活性+++率および生存指数は,融解6から36 h後にかけて,FR区において無添加区と比較して高かった(P<0.05)。先体保有率およびMT活性は,FR区で他区と比較して高い傾向が見られた。以上より,浸透圧は330 mmol/kg,糖組成をFRとすることで,イヌ凍結融解精子の長時間の運動性および生存性が向上することが示唆された。

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