日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW1-1
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性周期・妊娠
子宮内エクソソームmiR-98による胚接着時の母体免疫系の抑制
*中村 圭吾草間 和哉出田 篤司今川 和彦堀 正敏
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抄録

【目的】哺乳類の妊娠の成立には,胚の子宮内膜への接着が必須である。胚接着には胚と子宮内膜との緊密なコミュ二ケーションが必要であり,近年,新たな細胞間情報伝達機構としてエクソソームが注目されている。特に,エクソソーム中のmiRNAは,生体内において様々な現象に関与していることが報告されているが,胚接着との関係は不明である。我々は,胚接着の培養モデルを確立しており,このモデルには接着期の妊娠ウシから回収した子宮灌流液が必須であることを明らかにしているが,その機序は不明である。そこで,我々は,子宮灌流液中のエクソソームが,胚接着に重要だと仮定し,エクソソームと胚接着との関連性について検証した。【方法】妊娠17日(接着前),20日(接着直後)のウシから子宮灌流液を回収した。次に,子宮灌流液からエクソソームを単離し,ウシ子宮内膜上皮細胞へ添加したのち,RNA-seqで全遺伝子を解析した。さらにエクソソーム中に存在するmiRNAをmiRNA-seqにて精査した。また,miRNAの子宮内膜上皮細胞への作用をqPCR,ウェスタンブロット法にて精査した。【結果・考察】RNA-seqにより,妊娠17日と比べて,妊娠20日のエクソソームを添加した子宮上皮細胞で特異的に発現量が減少した転写産物を112個同定した。また,妊娠20日のエクソソーム処置により子宮内膜上皮細胞において免疫系遺伝子群発現が抑制されていた。in silico解析およびmiRNA-seqにて,免疫抑制とmiRNAとの関連性を検証したところ,miRNAの候補のうち,妊娠20日のエクソソームでmiR-98の発現が上昇していた。さらに,miR-98を添加した子宮内膜上皮細胞において,免疫システム関連因子の遺伝子およびタンパク質発現が低下した。本研究は,胚接着時において,miR-98を含むエクソソームが,子宮内膜上皮細胞の免疫系遺伝子群発現を抑制していることを明らかにした。これは,エクソソームが胚接着に適した子宮内環境を構築していることを示唆している。

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