日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-23
会議情報

卵巣
マウスの原始卵胞形成過程におけるコルチゾール経路の関与
*小原 瑞歩梅野 拳佐々木 将木村 直子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】ストレス時に副腎皮質から多量に分泌されるコルチゾールは,成体での卵巣機能において,GnRHやLHの応答阻害により,排卵を抑制することが知られている。一方,このコルチゾールの分泌量は,周産期に胎仔副腎で高くなり,胎盤を通じ母体に働きかけ,分娩を誘起する。今回我々は,このコルチゾール経路とマウス周産期前後の卵巣内原始卵胞形成過程との関わりについて調査した。【方法】C57BL/6J系統の胎齢18.5日(E18.5),出生後0時間(h),36 h,60 h雌マウスより卵巣を回収した。これらについてELISA法によるコルチゾール量,蛍光免疫染色法及びウエスタンブロッティング法によるコルチゾール関連因子タンパク質の局在及び発現量を評価した。また新生仔に合成コルチゾール様物質Dexamethasone(0.5 mg/kg~2.0 mg/kg)あるいは対照区として生理食塩水を腹腔内投与し,60 hで卵巣を回収し,連続切片により卵胞数を計測した。【結果・考察】マウス新生仔の副腎におけるコルチゾール量は,0 hで最も高かった。一方,卵巣におけるコルチゾール量は,E18.5~36 hで発現は抑制され,60 hで有意に増加した。コルチゾールからコルチゾンへの不活化を行う酵素Hsd11b2タンパク質は,全ての時間で卵母細胞に局在し,特にE18.5,0 h,36 hで強く局在していた。一方,コルチゾール受容体タンパク質Nr3c1は,0 h以降の卵母細胞に弱く局在し,発現量に経時的な変化はみられなかった。Dexamethasone投与による原始卵胞数の推移は,1.0 mg/kgまで濃度依存的に増加する傾向がみられたが,2.0 mg/kgで有意に減少した。以上から,原始卵胞形成には,コルチゾールそのもの,あるいは活性型コルチゾールから不活型コルチゾンへの代謝のいずれかが関与しているものと考えられた。

著者関連情報
© 2019 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top