主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第114回日本繁殖生物学会大会
回次: 114
開催地: Web開催(京都大学)
開催日: 2021/09/21 - 2021/09/24
【目的】網走市では,良質のオイルと赤身肉の生産を目的に1,400羽以上のエミューを飼育しており,その繁殖期は11月から翌年4月とされる。本研究では,エミューにおける人工繁殖技術の確立を目指し,造精能力の季節変化を調査し凍結精液の作製を試みた。【方法】雄エミュー80羽は9月から1月にと畜して精巣と精管を回収し,精管灌流による回収精子数を調査した。人工総排泄腔による射出精液採取は,雄エミュー1羽を用いて12月から翌4月に29回実施した。精液は,家畜改良センターのMA法により凍結(n=3)し,MA濃度(7.5%および18%)が凍結融解後の精子に及ぼす影響をFITC-PNA/PI染色法で評価した。【結果】精巣重量,長径および短径は,いずれも9月から1月にかけて増加し,12月から1月に最大値を示した。精管精子は9月以降に観察され,採取月に関係なく個体差が大きかった(最小−最大; 0.1億–44.4億/羽)。射出精液量は平均0.7 ml(0.1–1.6 ml)/回,精子数は平均17.6億個(6.4億–32.8億個)/回,精子濃度は平均34.1億/ml(4億–109.3億/ml)/回であり,採精月との関係は認められなかった。凍結前の射出精子の生存率(86.7±0.8%)に比較して,凍結融解後は7.5%MA区(50.1±10.1%)で有意(p<0.05)に低下したが,18%MA区(70.2±2.5%)は有意な低下が認められなかった。先体膜正常率は凍結前(78.1±5.6%)に比較して,7.5%MA区(49.8±10.7%)および18%MA区(69.4±2.5%)ともに低下したものの,有意差は認められなかった。以上の結果より,エミューの造精能力が秋期から冬期にかけて高くなることが示された。精管精子数の大きな変動は,交尾行動の有無の影響を受けている可能性が考えられた。凍結融解後の精子生存率はMA濃度によって変化することが示唆された。今後は,採精羽数を増やして凍結融解精子に対するMA濃度の影響を検証する必要がある。