抄録
【目的】筋芽細胞の増殖・分化を調節する因子であるミオスタチン(GDF-8)の発現は、ニワトリ初期胚の体節形成に伴って筋節部で認められ、その発現は孵化後も継続する。しかし、筋肉形成に至る分子機構は明らかではない。哺乳動物ではGDF-8遺伝子欠損により筋肉肥大が報告されていることから、本研究では、増殖・分化能を有すニワトリ胚由来筋芽細胞の培養系を確立し、二本鎖RNA(siRNAs)を用いたRNA干渉によりGDF-8の機能を解析するとともに、それにより発現が変化する遺伝子を検索した。【方法】パ-コ-ル密度勾配法によりニワトリ12日胚の胸筋から筋芽細胞を分離し、この培養細胞にGDF-8-mRNAを標的とするsiRNAsをリポフェクション法により導入した。GDF-8、p21、MyoD、Myogeninの発現量はRT-PCRで測定し、活性測定は転写因子Smadが結合する配列(CAGA box:AGCCAGACA)をベクター(pGL3)に組み込み、細胞に導入してクロノスで連続的に(72 h)計測することにより行った。さらにsiRNAs導入により発現が変化する遺伝子をDifferential Display(DD)法で検索した。【結果】胚胸筋から分離した細胞は、筋芽細胞特有の増殖・分化の変化を示した。siRNAsを導入した筋芽細胞では、導入24 h後にGDF-8の発現、活性に明らかな減少が見られ、GDF-8の発現により誘導されるp21の発現も72 h後に減少した。siRNAsを導入した筋芽細胞では細胞融合率に影響が見られたが、細胞増殖には変化はなかった。さらに、DD法の結果から、発現量が変化した複数の遺伝子が見つかった。【結論】筋芽細胞においてsiRNAs を用いたRNA干渉によりGDF-8の発現、活性が抑制され、それに付随してp21などの発現が変化した。また、GDF-8は他の遺伝子の発現の変化を伴って筋芽細胞の増殖・分化に関わることが示唆された。