日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 22
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卵成熟
ブタ卵母細胞の成熟過程におけるリボソームタンパク質S6のリン酸化とMAPK経路の活性化
*萩野 輝宮野 隆
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抄録
【目的】ブタ卵母細胞では卵核胞崩壊(GVBD)後にMAPKが活性化される。タンパク質合成阻害剤であるcycloheximideを用いた実験から,MAPKの活性化には成熟過程で新たに合成されるタンパク質が必要であることが示唆されている。哺乳類の体細胞ではリボソームタンパク質S6のリン酸化がタンパク質合成に関与していると考えられている。本研究では,ブタ卵母細胞の成熟過程におけるリボソームタンパク質S6のリン酸化と,MAPKおよびその下流に位置するRSKの活性化との関連性を検討した。【方法】ブタ卵巣の直径4-6 mmの卵胞から顆粒膜細胞-卵母細胞複合体を取り出し,hMGを含む成熟培養液中で14時間培養し,その後cycloheximide,MEKの阻害剤であるU0126あるいはp70S6Kの阻害剤であるrapamycinを添加した培養液中で14時間培養した。培養後,卵母細胞のGVBD率を調べるとともにリボソームタンパク質S6のリン酸化,MAPKおよびRSKの活性化をウエスタンブロッティングによって調べた。【結果】培養28時間後,対照区の卵母細胞はGVBDを起こして,第一減数分裂中期に達しており,リボソームタンパク質S6はリン酸化され,MAPKおよびRSKはいずれも活性型へと変化した。cycloheximideで処理した卵母細胞では,GVBD,MAPK,RSKの活性化は阻害されたが,リボソームタンパク質S6のリン酸化は起こった。U0126で処理した卵母細胞でも,MAPKおよびRSKの活性化が阻害され,リボソームタンパク質S6のリン酸化が起こったが,卵母細胞は第一減数分裂中期に達していた。一方,rapamycinで処理した卵母細胞では,リボソームタンパク質S6のリン酸化が阻害され,また,MAPKおよびRSKの活性化も阻害された。以上のことからリボソームタンパク質S6のリン酸化は,MAPK経路の活性化に関与している可能性が考えられた。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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