抄録
【目的】卵胞腔形成前のブタ卵胞を卵胞液を添加した培地中で培養し,ブタ発育途上卵母細胞の発育に及ぼす卵胞液の効果を検討した。【方法】食肉センターで入手した未成熟雌ブタの卵巣からコラゲナーゼ処理によって直径60-70 µmの卵母細胞を含む0.2-0.4 mmの卵胞腔形成前卵胞を採取した。卵胞をコラーゲンゲルに包埋し,38.5˚C,5%CO2‐95%空気の気相下で14日間培養した。基礎培地としてはβ-mercaptoethanol,抗生物質,2 mAU/ml FSHを添加したαMEMを用いた。実験1:ウシ胎児血清(FCS)および直径2-7 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(pFF)をそれぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。実験2:直径4-7 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(LpFF),直径2-3 mmの卵胞から採取したブタ卵胞液(SpFF)をそれぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。実験3:LpFF添加培地において培養期間を延長した。実験4:LpFF およびSpFFを熱処理(56˚C,30分間)し,それぞれ基礎培地に5%の濃度で添加した。【結果】実験1:pFF添加培地では卵胞の形態が維持され,卵胞は発達した。実験2:培養前直径約300 µmであった卵胞はLpFF添加培地において発達した(培養終了時:662.9±20.5 µm)。また,LpFF添加培地では57%の卵胞が卵胞腔を形成し,卵母細胞の直径も有意に増加した (培養終了時:94.4±1.8 µm)。しかし,SpFF添加培地中では卵胞の形態は崩壊した。実験3:培養期間を26日まで延長したが,卵胞および卵母細胞の直径の増加はみられなかった。実験4:熱処理LpFF添加培地中では,卵胞および卵母細胞は非熱処理LpFFと同様に発達した。熱処理SpFF添加培地中では非熱処理SpFFとは異なり,卵胞および卵母細胞の直径が増加した。以上の結果より,LpFFは卵胞腔形成前の卵胞の胞状卵胞への発達を促進すること,また内部の卵母細胞を発育させることが明らかになった。