地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
研究ノート
日本型漁業管理とコモンズ論
E.オストロムの理論を用いた予備的考察
猪又 秀夫
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 55 巻 1 号 p. 45-72

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抄録

2009年にノーベル経済学賞を受賞したE.オストロムは,集権的政府や自由市場に依らずとも,資源利用者の自主的な協力によって共有資源を管理できることを理論と実際の両面から実証している。日本における漁業管理は,政府の公的管理を基本としつつも,漁業者の自主的な協力が大きな役割を担っており,「日本型」と形容される。本稿では,オストロムのコモンズ論が日本型漁業管理に適用できるかについて,先行研究をレビューするとともに,公表資料を用いて予備的な検討を行った。結果,地先水面における漁業はもとより,比較的大型の漁船により営まれる沖合域における漁業の管理についても,オストロムが提唱する制度設計原則や,社会関係資本,多中心性といった考えが相当程度適合することが認められた。今後更なる検証が必要であるものの,日本型漁業管理は,概してオストロムの理論に裏打ちされていると考えられる。

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© 2014 地域漁業学会
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