2008 年 37 巻 4 号 p. 282-287
土壌汚染が社会的に問題となっている中,コストと環境負荷が小さいファイトレメディエーションへの関心が高まっている.しかし,ファイトレメディエーションによる汚染物質の分解メカニズムには解明されていない部分が残されている.本研究では,長期間にわたって自然に原油が存在している油徴地帯から採取した土壌中の微生物群集に対してイタリアンライグラスが与える影響を評価した.原油資化微生物数,微生物活性及びPCR-DGGE法による微生物相解析を行うとともに,原油の含有量を経時的に評価した.この結果,イタリアンライグラス栽培土壌では,微生物相の改変が生じ,土壌微生物の活性が向上するとともに,原油資化性菌数が増加することが示された.また,このような微生物相の変化と対応して,栽培区の原油濃度が非栽培区に比べて有意に低下した.以上の結果から,植物の栽培によって生じた選択的な微生物相の改変が,土壌の原油濃度の低下に関与する可能性を示した.