1982 年 11 巻 2 号 p. 101-106
パイライトを含む頁石とこの岩石が酸化的環境下で風化してできた土壌中の鉄, イオウ, カドミウム, 亜鉛および鉛の含有量を調べ, これらの化学元素の風化過程における動きを検討した.岩石と比較して, 土壌中における各元素の含有量は, 鉄, イオウおよび鉛が減少し, 特に鉛およびイオウの減少率が大きい.一方, 亜鉛は増加しており, カドミウムはほぼ元の岩石中の含有量と同じであった.
イオウはパイライト溶出により硫酸根として離脱する.鉄は, 一部鉄 (II) イオンとして除かれるが, その大部分は不溶性の酸化鉄として土壌中に留まるものと思われる.風化過程におけるこの岩石のトレース金属に対する吸着あるいは保持力は, 亜鉛>カドミウム>鉛である.トレース金属元素の結晶イオン半径が小さいほど, その吸着力が強いことが指摘される.しかし, 鉱物の風化過程においては多くの因子が作用し, イオン半径のみからこれらの金属元素の挙動を説明することはできない.