環境技術
Online ISSN : 1882-8590
Print ISSN : 0388-9459
ISSN-L : 0388-9459
シュライバー式向流円形曝気槽における生物学的脱窒
G.J.M. シュトルテンボルグ
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 11 巻 2 号 p. 146-152

詳細
抄録

本論文は, 昭和56年12月21日に大阪科学技術センターにおいて開催された「欧州とわが国における下水脱窒処理の動向に関する講演懇談会」において発表された講演の一つである.
オランダのデルフトには, 四千人以上の研究員を有する膨大な組織の応用物理研究所がある.西独水処理業界の大手, シュライバー社の経営者, ドクター・アウグスト・シュライバーは, この研究所において, オキシデーション・ディッチの開発者として有名なドクター・パスヴィアとともに, 新しい生物学的廃水処理技術を研究し, 本論文中に紹介されている向流円形曝気槽の特許を取得, これを実用化した.現在, 欧州にはこのタイプの曝気槽が500近くあり, 米国においても急速に市場開拓が進んでいる.わが国においては岩尾磁器工業 (株) がこの技術を導入し, 国内十数ケ所においてこのタイプの曝気槽を建造し, 好成績をあげている.
本題に入る前に, 向流円形曝気槽について簡単に紹介しておきたい.図-1は佐賀大学の廃水処理に使用されている向流円形曝気槽の俯瞰写真であり, 図-2はその構造を示す立面図および平面図である.このタイプの構造体は, わが国でも特許になっている (特公昭48―13678, 登録番号713921) .構造面での特徴は, つぎのとおりである.
1) 円形槽内に一部連通した仕切壁があり, 中心部が最終沈殿槽, 外側のリングが曝気槽になっている.
2) 外側の曝気槽を回転走行するブリッジがあり, これに散気装置が装備されている.
3) 内側の沈殿槽には, 上記走行ブリッジとは別に, 緩慢に動く汚泥掻寄機がある.
4) バッフル・プレートを設けることによって, 曝気槽内の水流速度がブリッジの走行速度よりもおそくなるようになっている.これは本論中で紹介される脱窒条件を設定する上で, 非常に重要なことである.
このような構造を有することにより, 従来の曝気システムに比べて, つぎのような利点が得られる.
1) 曝気槽内で, デッド・スペースのない, 全体的な水平流による撹伴混合が行なわれる.
2) ブリッジの走行速度が, 槽内水の流速よりもはやいため, 散気装置から上昇する気泡は, 斜め後方に上昇し, 廃水との接触時間が長く, 酸素吸収効率が通常の倍近くまで向上する.これは省エネルギー面からも重要な特徴である.
3) 上記のように撹伴混合と曝気とが別々にコントロールされ, 曝気を有効ならしめている.これは従来の旋回流方式, または表面曝気方式に比べて大きな利点である.
従来は, 向流円形曝気槽は, もっぱら活性汚泥プロセスに適用されていたが, 過去数年間にわたって, 講演者自身が試みた, BOD除去とともに硝化・脱窒を兼ねた廃水処理の結果が以下のように発表されたのである.

著者関連情報
© 環境技術学会
前の記事
feedback
Top