脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
研究報告
左被殻出血例の血腫の進展方向とFIM認知項目の予後との関連性
若旅 正弘大村 優慈石橋 清成岡本 善敬山本 哲
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2018 年 18 巻 p. 1-8

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抄録

左被殻出血では多様な領域に血腫が進展し,様々な認知機能障害,情動障害を呈する可能性があるが,血腫の進展方向とFIM認知項目の予後との関連性は明らかとなっていない.そこで本研究は,これらの関連性を検討することを目的とした.左被殻出血患者19例を対象とした.先行研究に準じ,頭部CT画像(松果体レベルの横断像)を用いて,前頭葉先端から血腫前端の距離をA,後頭葉後端から血腫後端の距離をB,大脳の前後長をC,大脳の外側端から血腫外側端の距離をD,大脳縦列から血腫内側端の距離をE,大脳の最大横径×1/2をFとし,前方比=(A/C)×100,後方比=(B/C)×100,外側比=(D/F)×100,内側比=(E/F)×100として算出した.血腫の各進展比と発症3ヶ月時点のFIM認知項目との相関を評価した.前方比は「社会的交流」「記憶」を除くFIM認知項目と有意に相関した.後方比は「社会的交流」のみと,外側比は「問題解決」のみと有意に相関したが,内側比は有意に相関した項目はなかった.血腫の進展方向により,有意に相関するFIM認知項目が異なっていた.FIM認知項目は日常生活の認知・情動面に対する介助量を示す.したがって,本研究結果は血腫の進展方向により,発症3ヶ月時点の左被殻出血患者が認知・情動面において日常生活上で介助を要する場面が異なることを示唆するものである.

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© 2018 脳機能とリハビリテーション研究会
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