日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P2-37
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放射線治療生物学(感受性・高LET・防護剤・増感剤・ハイパーサーミア・診断)
細胞の放射線感受性の変化と甲状腺ホルモン受容体
*松瀬 美智子SAENKO VladimirSEDLIAROU IlyaROGOUNOVITCH Tatiana難波 裕幸光武 範吏山下 俊一
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抄録
【はじめに】
甲状腺ホルモン受容体 (THR)は転写因子として働く核内受容体である。THRにはTHRAとTHRBがあり、THRB1タンパクの発現レベルの変化や遺伝子変異が多くの癌で報告されている。今回、放射線感受性におけるTHRB1の働きを、種々の培養細胞株を用いて検討した。
【材料と方法】
甲状腺乳頭癌細胞 (NPA, TPC-1)、甲状腺未分化癌細胞 (ARO, FRO)、ヒト乳癌細胞 (MCF-7)及び、アフリカミドリザル腎細胞 (COS-7)を用いて、Western blottingで内因性THRB1のタンパク質の発現レベルを確認した。次にアデノウイルスベクターを用いてTHRB1 (wild type/mutant)を細胞に導入し、コロニー形成法で放射線感受性を評価した。さらに、Western blottingで、アポトーシス、細胞増殖、および細胞生存シグナル経路の関与を検討した。
【結果および考察】
内因性のTHRB1が発現しているNPA, TPC-1, FROでは、THRB1 (wild type/mutant)の導入による放射線感受性の変化は見られなかった。一方、内因性THRB1の発現のないARO、低発現のMCF-7, COS-7では、THRB1 (wild type)を導入すると、放射線感受性が増加し、一方THRB1 (mutant)の導入により、放射線抵抗性に変化した。さらに、THRB1 (wild type)を導入したAROにおいて、切断されたPARPの増加と、cyclin D1の減少が蛋白レベルで観察され、THRB1 (mutant)を導入したMCF-7では、リン酸化AKTの発現増加が見られた。以上のことから、THRB1は、細胞の放射線感受性に直接影響を与えるが、その変異または低発現によりアポトーシス抵抗性、細胞増殖の促進など異なる機序を介して、多様な癌細胞の放射線抵抗性を惹起していることが推察された。
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© 2006 日本放射線影響学会
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