日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: DP-127
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DNA損傷の認識と修復機構
DNA損傷チェックポイントにおけるNBS1の役割
*加藤 晃弘初村 裕英小松 賢志
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抄録
遺伝情報の担い手であるDNAは、外的要因や内的要因によって絶えず損傷を受けている。このような損傷はDNA修復機構によって修復されるが、修復されないまま細胞周期が進行すると、突然変異や細胞のがん化、もしくは細胞死をもたらしてしまう。そのため、生物はDNA損傷に応答して細胞周期を停止させる機構を進化させてきた。このような機構はDNA損傷チェックポイント機構と呼ばれる。ホ乳類のDNA損傷チェックポイントでは、ATMとATRの二つのタンパク質キナーゼが中心的な役割を果たしている。これらのキナーゼは様々なタンパク質をリン酸化し、それによりチェックポイントが活性化される。ATMとATRはDNA損傷の種類によって互いに役割を分担しており、ATMは主に放射線などによって生じるDNA二重鎖切断に対するチェックポイントで機能し、ATRは主に紫外線やヒドロキシ尿素などによって生じる複製ストレスに対するチェックポイントで機能する。ATMは放射線によって活性化するが、この活性化にはMRE11/RAD50/NBS1 (MRN) 複合体が関与している。NBS1のC末端には、MRE11結合領域とATM結合領域が存在し、この二つの領域がATMの活性化に重要であることが示されている。一方、ATR依存的なチェックポイント経路にもNBS1が必要とされる。また、ATRとNBS1が免疫沈降法において共沈することも示されている。しかし、ATRとNBS1の結合領域や、ATR経路に必要とされるNBS1の領域は不明であり、ATR経路においてNBS1がどのような役割を持っているかは明らかではない。そこで、我々はNbs1欠損マウス細胞を用いて様々な部分欠失型Nbs1発現細胞を作製し、ATR経路におけるNBS1の役割について検討を行った。また、NBS1がATMとATRの両方に結合することの意義についても現在検討中であり、これらの結果をまとめて報告する予定である。
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© 2007 日本放射線影響学会
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