抄録
現在、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の主原因のひとつである肥満が急増しており、肥満や脂肪細胞に関わる研究が注目されている。肥満は脂肪前駆細胞から分化した脂肪細胞が脂質を蓄えて肥大した状態であると考えられているので、脂肪前駆細胞の分化機構について研究することは非常に有益である。我々は、海洋微生物由来の物質が脂肪細胞分化を抑制することを発見した。驚くべきことに、それらの海洋微生物由来の物質の中には、脂肪細胞の脱分化機能を有していた。細胞周期がG1/G0期で停止することが細胞分化の引き金になることはよく知られており、さらには放射線が細胞周期停止を引き起こすことが数多く報告されている。環境ストレスの中の1つである低線量放射線に関しては、放射線照射により細胞に分裂異常が生じてG1/G0期で細胞周期が停止することがわかっていることから、適当な線量の放射線が分化を誘導する可能性がある。ゆえに、細胞分化の機構を研究すれば、細胞分化にはストレス応答が重要であることが解明され、また、肥満予防に貢献するかもしれない。今回、環境ストレスによる分化誘導と分化抑制機構について発表する。