抄録
UBC13は酵母からヒトまで保存されたユビキチン結合酵素(E2)で、Rad6/18やPCNAが関与する複製後修復経路に関与していることが酵母細胞の解析より示唆されている。我々は、siRNA法および遺伝子ノックアウト法を用い、ヒト細胞とニワトリDT40細胞で、UBC13の発現低下および欠損株を作製した。UBC13欠損DT40は増殖が遅く、自然増殖中に染色体断裂を発生していた。また、紫外線、放射線、架橋剤など様々なDNA障害剤に対し高い感受性を示したことから、動物細胞のUBC13も複製後修復に関与しており、ゲノム安定性に重要な役割を担っていることが示唆された。興味深いことにUBC13欠損株では、放射線照射により形成されるユビキチンのフォーカス(FK2抗体で認識)が消失しており、さらにユビキチン連結酵素(E3)である家族性乳癌の原因遺伝子Brca1の活性化およびDNA損傷部位への集積、それに引き続くRad51フォーカス形成が顕著に減少していた。人工2重鎖切断基質-制限酵素I-SCEIを用いて2重鎖切断の修復効率を測定すると、その主要な経路である相同組換えの活性が著明に低下していた。UBC13欠乏状態では、1本鎖結合蛋白RPAがDNA損傷部位に十分に集積していないことから、相同組換え活性の低下は組換え反応の開始に必須な1本鎖DNAの形成がうまく起こらないことが原因と考えられた。さらに、UBC13欠損株では、ヒストンH2AXを含むヒストンH2Aのユビキチン化が著明に低下しており、ヒストンを含む染色体蛋白のユビキチン化とDNA損傷修復、とりわけ組換えの開始に必須な一本鎖DNAの生成との関連が示唆された。