日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W3-7
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放射線DNA損傷修復機構研究の最前線
RAD51フォーカスとATM経路活性化
*鈴木 啓司山内 基弘
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キーワード: DNA損傷, DNA修復, ATM
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抄録
放射線照射により誘発されたDNA二重鎖切断が、S1981自己リン酸化ATMを起点としたDNA損傷チェックポイント経路を活性化することはよく知られている。これらチェックポイント因子は可視化できるフォーカスを同時に形成し、DNA損傷情報の増幅に重要な役割を果たしている。DNA二重鎖切断はおもに非相同末端結合修復と相同組換え修復により修復されるが、相同組換えに関わるNBS1蛋白質はリン酸化ATMと共局在するフォーカスを形成し、ATM経路の活性化に重要な役割を果たすと考えられている。一方、RAD51依存的相同組換え修復の役割ついてはいまだ不明である。そこで本研究では、RAD51フォーカス形成とATM経路活性化の時空間的関係について検討した。 正常ヒト二倍体細胞において、X線照射30分後の段階で微細なRAD51フォーカスを検出することに成功した。RAD51フォーカスはおもにS期の細胞で観察され、時間が経つにつれてフォーカスの数が減少するが、その大半が、S期の細胞では微細なフォーカスを形成するリン酸化ATMフォーカスと共局在した。また、いずれのフォーカスも照射後にサイズの変化が見られたが、リン酸化ATMフォーカスの方が顕著で、RAD51とともに相同組換えに関与するBRCA1のリン酸化型蛋白質フォーカスやNBS1フォーカスもリン酸化ATMフォーカスと同様の変化を示した。さらに、この時点でのフォーカス構造の三次元的解析から、RAD51フォーカスはリン酸化ATMフォーカスの一部に包含される形態を示すことも明らかになった。 以上の結果から、RAD51フォーカスが可視化できる相同組換え修復の場でもDNA損傷チェックポイントが活性化されていることが明らかになった。しかしながら、DNA損傷チェックポイント因子フォーカスの二次的変化は相同組換え修復領域を越えたクロマチン領域に拡がり、相同組換え修復過程に共役してDNA損傷情報の増幅が起こっていることが考えられた。
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© 2007 日本放射線影響学会
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