日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P3-123
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放射線被ばく影響・疫学
原爆被爆者の末梢リンパ球における転座頻度-蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法による再解析
*児玉 喜明中野 美満子大瀧 一夫CULLINGS Harry M三角 宗近中村 典
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キーワード: 原爆被爆者, 転座頻度, FISH
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抄録
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法により調べた原爆被爆者の末梢血リンパ球における転座頻度の解析結果を報告する。FISH法を用いたこの調査は、以前のギムザ染色法を用いた細胞遺伝学調査が提起した幾つかの疑問に対する答を出すと期待されていた。これらの疑問とは、広島と長崎の両市における線量反応の違い、あるいは長崎工場内被爆者でみられる有意に低い線量反応などである。以前のギムザ染色法による調査は、広島と長崎の研究室でそれぞれ別個に得られた結果のため、研究室間の観察誤差を含む可能性を否定できなかった。この点を解消するため今回のFISH法による調査は広島研究所のみで行われた。現在までに、広島900例、長崎541例の原爆被爆者について調査が完了している。これまでの解析結果を要約すると次のようになる:(a)以前のギムザ染色法による解析結果と同様に、物理学的線量に対する個々人の転座頻度に幅広い分散が観察された;(b)FISH法を用いることで都市間の差が大きく縮まり、両市の差は「示唆される」となった;(c)長崎の工場内で被曝した人、あるいは屋外被曝・遮蔽ありの人は両市とも、日本家屋内で被曝した人よりも有意に低い線量反応を示した;(d)以前の調査に見られた都市間差が大幅に減少したということは、それが主として広島・長崎の研究室における異常検出率の差によるものであった可能性が示唆された。
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© 2009 日本放射線影響学会
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