日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OC-12
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発がん2
放射線誘発脳腫瘍に特徴的なゲノムコピー数異常と広範な遺伝子発現への影響
*高畠 貴志石田 有香柿沼 志津子山内 一己上西 睦美森竹 浩之鬼頭 靖司太田 有紀西村 まゆみ島田 義也
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抄録
放射線誘発腫瘍に特徴的なゲノム異常を知ることは、低線量放射線の正確なリスク評価や、放射線発がんメカニズムの解明にとって極めて重要である。我々は、C3B6F1系統のPtch1遺伝子ヘテロ欠損マウスに生じた脳腫瘍をLOH解析した結果、自然発生した腫瘍ではテロメア末端におよぶ広い領域でのLOH(S型)により、また3Gy照射群では狭い領域でのLOH(R型)により正常Ptch1対立遺伝子が喪失しており、さらにより低い線量(0.05~1.5Gy)では線量依存的にS型からR型に移行することを見出した(石田ら、本大会)。そこで、放射線誘発腫瘍の特徴を明らかにする目的で、非照射群と0.2Gy照射群のS型各3例、0.2Gyと1.5Gy照射群R型の各3例についてアレイCGHおよび発現アレイ解析を行った。その結果、S型では、Ptch1遺伝子周辺のゲノムコピー数が正常である(組換型)のに対し、R型ではコピー数が半減(欠失型)していた。また、すべてにおいて、6番染色体の本数が増加していた。発現アレイ解析の結果、約3,500のプローブが群間有意差を示し、大部分がS型とR型の群間差であった。この3,500に対してクラスター解析したところ、S型とR型にはっきりと分岐した。特にR型腫瘍でのPtch1遺伝子周辺の共通欠損ゲノム領域(43~66Mb)の多数の遺伝子は、共通してR型での発現量がS型の約半分に低下しており、R型でのゲノムコピー数半減を直に反映していた。他方、6番染色体上の全遺伝子発現について、染色体コピー数増加との相関性を調べた結果、約40%の遺伝子において相関係数が0.5以上あり、0.9以上の強い相関係数を示す約100の遺伝子の中には、がん関連候補遺伝子も存在した。これらの結果は、放射線照射による特徴的なゲノム異常である欠失や、トリソミーといったコピー数変化を伴うゲノム異常が、非常に多くの遺伝子発現に直接および間接的に広く影響を及ぼすことを示唆している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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