日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: S1-2
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シンポジウム1 宇宙放射線研究―ISS建設完成と宇宙実験報告と計画
「きぼう」での宇宙放射線研究LOH報告: 宇宙放射線被ばくヒト培養細胞の二面性、変異誘発と適応応答
*谷田貝 文夫本間  正充鵜飼 明子大森 克徳菅澤 薫堂前 直石岡 憲昭
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抄録
宇宙は人類にとって地上とは大きく異なる環境であり、様々な宇宙環境因子による生物影響を遺伝子レベルで解明することは、その環境の利用推進にあたって重要である。ここでは、国際宇宙ステーションのきぼう棟内にヒトリンパ芽球細胞を134日間凍結保存(被ばく総線量72mSv)して、宇宙放射線の生物影響を調べた結果を報告する。 低線量かつ低線量率の宇宙放射線の影響を高感度に検出する目的で、細胞を地上に回収した後、LOH( Loss of Heterozygosity:ヘテロ接合性の喪失)解析法を用いて、宇宙放射線によって生じたDNA損傷が原因と考えられる、遺伝子および染色体レベルでの突然変異の同定・解析を試みた。また、これらのDNA損傷が蓄積された結果、細胞の地上回収後の培養で放射線適応応答を示す(宇宙放射線被ばくが適応応答の前照射となりうる)可能性を追求する目的で、培養後にX線(2 Gy)照射を行い、上記と同様の遺伝解析法を駆使して“X線照射による変異誘発”の抑制効果についても調べた。X線照射の代わりに制限酵素I-SceIベクターの感染によって導入した、染色体DNA2重鎖切断の修復効率が上昇する可能性(適応応答効果)も併せて検討した。これらの実験結果は、宇宙放射線被ばく細胞が変異誘発と適応応答の両方をもたらす可能性を示唆している。
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© 2010 日本放射線影響学会
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