抄録
【目的】グアニンから活性酸素により生ずる8-hydroxyguanine(8-oxo-7,8-dihydroguanine)は正常塩基に比較して酸化されやすく、二次酸化産物が生ずる。その例がspiroiminodihydantoin(Sp)とguanidinohydantoin(Gh)であり、DNA中に生じたSpとGhは変異原性が著しく高いことが報告されている。本研究では、8-hydroxy-dGTP(8-oxo-7,8-dihydro-dGTP)の二次酸化産物の大腸菌における変異原性を調べることにした。
【方法】8-Hydroxy-dGTP特異的分解酵素MutTを欠損する大腸菌を過酸化水素で処理した。また、SpとGhのデオキシリボヌクレオチド体を大腸菌に導入した。
【結果】大腸菌mutT株の過酸化水素処理により、A:T→C:G変異が減少するとともにG:C→C:G及びG:C→A:T変異が増加した。一方、SpとGhのデオキシリボヌクレオチド体の大腸菌への導入は、変異体率に影響を与えなかった。
【結論】8-Hydroxy-dGTPの二次酸化産物はG:C→C:G及びG:C→A:T変異を誘発するが、SpとGhのデオキシリボヌクレオチド体の寄与は乏しいと推定される。