日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OB-3-5
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B: 放射線応答・シグナル伝達
p53の活性化制御における53BP1の機能的役割
*松井 理橋本 優実橋本 光正岩淵 邦芳
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抄録

 53BP1は電離放射線照射によって誘発されたDNA二本鎖切断部位に集積し、その後の細胞周期停止(DNA損傷チェックポイント)、およびDNA二本鎖切断修復に関与する。
 53BP1はその名の由来の通り、我々が癌抑制遺伝子産物p53と結合する蛋白質の一つとして初めて同定したものであり、両者は、53BP1のBRCTドメインとp53のDNA結合ドメイン、および53BP1のTudorドメインとp53のジメチル化Lys382を介してそれぞれ結合する。しかしながら、これまでに53BP1とp53の機能上の関連性については、あまり明らかにされていない。そこで我々は、53BP1がp53の機能にどのように関わっているのかを明らかにするため、正常なp53を持ついくつかのヒト癌細胞株について、RNAiによる53BP1のノックダウン後、X線照射によるp53の蛋白量の増加、p53のSer15のリン酸化、およびp21の発現を調べた。その結果、いずれの場合も53BP1のノックダウンにより阻害が認められた。また、この時、ATMのSer1981のリン酸化は、53BP1ノックダウンにおいて、ほとんど影響が認められなかった。
 以上より、53BP1はp53活性化シグナル経路において、ATMの下流、p53の上流で働いていることが示唆された。

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© 2011 日本放射線影響学会
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