抄録
目的】
放射線照射してから18時間後に現れるタマネギ発芽種子の根端細胞に見られる小核の発生頻度は、低線量では線量の増加に伴って増加するが、さらに高線量では減少に転じる。当初、高線量で小核が見られなくなるのは、細胞死によるものだと考えた。しかし、根の伸長の実験では、γ線で160Gyを照射しても、根の伸びは止まることがなかった。その後タ
マネギの成長に目立った影響がないことから、小核の減少の主な原因は、細胞死ではなく、照射後の細胞分裂が遅延するのではないかと考えられる。このことを明らかにするため、γ線照射を受けたタマネギの根端細胞における小核発生頻度と細胞分裂の遅延の関係を調べた。
【方法】
長崎大学先導生命先導生命科学研究支援センターアイソトープ実験施設のセシウムを線源としたガンマ線を用いて、タマネギ発芽種子を照射し、小核の発生は時間につれて、どのように変化するのかを観察した。
【結果】
線量の増加に伴って小核が出現するピークが遅くなる。
線量の増加につれてピーク時の小核発生頻度は4Gyまで一旦増加するが、その以降は減少に転じる。
線量の増加につれて細胞分裂指数のピークも遅くなる。