日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: S1-2
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シンポジウム1 放射線による細胞死を考える。その2.治療戦略に向けて
DNA損傷におけるアポトーシス誘導機構
*吉田 清嗣
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キーワード: DNA損傷, アポトーシス, p53
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抄録

DNAは遺伝情報の担い手であり、その正確な複製と子孫への伝達は生物の本質的特性である。従って重篤な危険性を孕むDNA損傷に対し、生物は多様なシグナル伝達機構により細胞周期を停止して損傷を修復し、修復不能な場合には細胞死(アポトーシス)を誘導し、損傷によって生ずる突然変異の蓄積を回避する。DNA損傷制御機構の破綻は、癌をはじめとする広範な疾患の原因となる。我々はこのDNA損傷におけるシグナル伝達を解明するために、中心的な役割を果たしている癌抑制遺伝子p53の機能制御について研究を行っている。p53の機能は主にp53蛋白の修飾によって制御されており、とりわけ46番目のセリン残基がひとたびリン酸化されると、アポトーシスによる細胞死という不可逆な転帰をとることが知られている。我々は近年、このセリン46をリン酸化するキナーゼとしてDYRK2を同定した。しかしこのリン酸化によって制御されるアポトーシス誘導の詳細な機構は依然として明らかにされていない。そこでセリン46のリン酸化によって特異的に誘導される標的遺伝子を同定するために、マイクロアレイとChIP-sequencingによる網羅的解析を行った。まずマイクロアレイ解析によりセリン46のリン酸化によって発現が変化する遺伝子群を網羅的に探索した。次にChIP-sequencing によりp53のプロモーター領域への結合配列を解析し、セリン46のリン酸化によってp53結合コンセンサス配列のモティーフが変化するかどうかについて検討を行った。この結果とイクロアレイによって得られた標的分子の解析結果を組み合わせることにより、セリン46のリン酸化特異的に発現が誘導される候補遺伝子の同定を行っている。本講演では、解析によって得られた候補遺伝子とその機能について、議論したい。

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