日本ロボット学会誌
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マルチプロセッサ・スケジューリング・アルゴリズムを用いたロボット制御計算の並列処理手法
笠原 博徳成田 誠之助
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1984 年 2 巻 5 号 p. 387-401

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抄録

本論文では, ロボット制御計算のための実用的かつ汎用的な並列処理手法を提案する.提案する並列処理手法は, 高価なミニあるいはスーパーミニコンピュータの代わりに, 複数の安価なマイクロプロセッサを用いることにより, 冗長自由度を有する, あるいは有しないロボット・アームのカイネマティック制御/ダイナミック制御のための複雑な計算をリアルタイムで処理することを可能とする.また, これは同時にロボットコントローラの価格性能比・応答性・可搬性の向上等種々のメリットをもたらす.
このようなメリットを十分に生かすためには, 効果的な並列処理手法の開発が非常に重要となる.ただしここで並列処理手法とは, 制御計算をどのように小さな単位 (タスク) に分割し, それらのタスクをどのようにプロセッサ上にスケージュルすべきかという方法を定義するものである.
しかし, ロボット制御並列計算で要求されるスケジューリングは, 強NPハードと呼ばれるきわめて難しい最適化問題のひとつである, このため従来提案されている並列処理手法では, このスケジューリング問題を非常に簡略化しなければ解くことができず, 最小の並列処理時間を得ることができなかった.
これに対して本並列処理手法は, 我々が新しく開発したマルチプロセッサ・スケジューリング・アルゴリズムDFIIHS (Depth First/Implicit Heuristicsearch) を用いることにより, 上記の非常に難しいスケジューリング問題を克服した.すなわちそれは, 任意のハードウエア構成 (プロセッサ数, プロセッサ結合方式等) のMIMDマルチプロセッサ上で, 種々のロボットに対する任意の制御アルゴリズムを, 最小時間で並列処理することを可能とする優れた手法である.

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