日本ロボット学会誌
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指と腕の協調制御手法
~指先の連続位置決め作業における指・腕軌道の自動決定~
菅野 重樹田中 良治大岡 俊夫加藤 一郎
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1986 年 4 巻 4 号 p. 343-352

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抄録

人間は指と腕とを巧みに使い分け, 協調させることによって複雑な作業を可能にしている.そこで, ロボットが作業を行う際にも, 人間と同じように, その作業内容に応じて指と腕の特性を生かした指と腕の使い分けをし, 協調させて作業することが効果的であるといえる.
本論文では, ロボットが行う作業として, その内容がロボットの指先における連続位置決め点の変化列として記述できる作業をとりあげ, この作業実行上でのロボットの指・腕協調制御の1手法を提案する.次に実際の作業例として, 鍵盤楽器の演奏をとりあげ, 楽譜から指・腕協調制御手法により自動的に指と腕の運動計画を決定する方法について述べる.
このような協調を考慮した指・腕運動計画を決定するための評価量としては, ロボットの運動に関する物理量のうち, 時間に関する項を含まない位置 (角度) 変化量を採用した.評価関数は, 各指各関節の変化角, 手先姿勢変化量, 手先姿勢予想変化量, 手首位置移動量, 手首位置予想移動量の5種類の変化量により構成した。この評価関数において, 腕の姿勢変化よりも指の姿勢変化が多くなるように重み付けを行う.
次に, 作業実行のためのロボットの行動計画内における指と腕の協調動作の設定方法であるが, ロボットの腕が作業中に単独で高速な動きとなることをさけ, 腕が動く必要がある場合には, 可能な限り指との協調動作となるような行動計画を選定するための評価関数を定めた.
以上の方法を, 5本指 (14自由度) と腕 (7自由度) からなる多自由度人間形ロボットに鍵盤楽器演奏作業を行わせる場合に適用した.その結果, 人間の演奏に近いなめらかな指・腕協調動作を含む軌道を自動的に生成することができ, また実際に演奏を実現した.

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