日本ロボット学会誌
Online ISSN : 1884-7145
Print ISSN : 0289-1824
ISSN-L : 0289-1824
DSPによる多関節マニピュレータの動的制御のための実時間計算
吉川 恒夫中村 仁彦横小路 泰義
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 6 巻 3 号 p. 175-183

詳細
抄録

本論文では, ロボットマニピュレータの動的制御のための実時間計算を低コストで行なうためにディジタルシグナルプロセッサ (DSP) を用いることを提案する.これまでにもDSPをロボットの制御に用いる例はあったが, それらは運動学や動力学といったロボットの制御計算の主要部分に対してDSPを用いたものではなかった.
一般にDSPの多くは浮動小数点ではなく固定小数点で演算を行う.したがって固定小数点表現を得るために, それぞれの単位の物理量をスケーリングするのが普通である.しかしながら, このようなスケーリング法はロボットマニピュレータの計算の場合には十分とは言えない.なぜならば, それぞれのリンクの物理量の数値の大きさがマニピュレータの動作に応じて大きく変化するため固定小数点による計算結果に大きな誤差を含む可能性があるからである.本論文では, この大きな計算誤差を避けるために, ロボットマニピュレータの再帰的な計算方式に着目した新たなスケーリング法を提案する.
また, 16ビットマイコンをホストコンピュータとし, DSPとしてTMS 32010を用いて実際にコントロールシステムを構成した.最後に, 一般の6自由度マニピュレータの運動学と動力学の統合化計算がDSPにより3.74msecで実行でき, 同様の計算が16ビットマイコンでは68.9msec要することを確認した.そして軌道計算やフィードバック補償も含めた動的制御のための総計算時間が, 一般の6自由度マニピュレータではDSPとマイコンによる本システムを用いた場合14.71msecであり, マイコンのみを用いると80msec以上を要することが分かった.

著者関連情報
© 社団法人 日本ロボット学会
次の記事
feedback
Top