日本ロボット学会誌
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走査型吸盤の基礎的研究
池田 喜一矢野 智昭
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1988 年 6 巻 3 号 p. 205-212

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抄録

本報告は, 壁面歩行ロボット用の吸着要素として特別に開発された走査型吸盤について論じている.
負圧式吸盤を利用した壁面歩行ロポットは, 従来対象壁面の材質, 凹凸などにあまり左右されずに移動できる反面, 亀裂や溝があると本質的に機能しないという欠点を有していた.
本研究で提案する走査型吸盤は, このような問題に対応するため複数の小吸盤を設け, 1台の真空ポンプと順次接続する事によって吸着力を発生する仕組みになっている.これは単一吸盤の吸引時の圧力低下時定数T1が漏れによる吸盤内の圧力上昇時定数T2に比ベ著しく小さいという吸盤特性を利用したもので, 次のような利点を有している.
(1) 走査型吸盤内の吸盤ユニットのいくつかが亀裂や溝の上にあっても, 残りの吸盤ユニットで吸着力を発生することができる.
(2) 漏れの生じている吸盤ユニットと真空ポンプとのポートは一周期のほとんどの位相において遮断されるため, 漏れ吸盤ユニットに対するエネルギーロスはきわめて少ない.
(3) したがって, 軽量・小型の真空ポンプを使用することができるため, 走査型吸盤は自立型ロポットを開発する上で有効である.
ここでは, このような走査型吸盤の基本特性を明らかにするためのシミュレーションおよび試作した走査型吸盤による基礎実験について報告する.

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