人工臓器
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徐放性制癌剤複合体の研究
―ポリ乳酸製剤について―
平野 誠酒徳 光明山下 良平岩 喬
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1984 年 13 巻 3 号 p. 1176-1179

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抄録

著者らは, 徐放性制癌剤複合体の担体としてポリグリコール酸を用いてきた。5-Fuとポリブリコール酸の複合体(F-PGA針)の5-Fu放出期間は約10日と短かく, 5-Fu放出期間を延長すべきことが指摘されてきた。そこで今回, ポリグリコール酸同様生体内吸収性高分子l-ポリ乳酸を担体として使用し, 5-Fu-l-ポリ乳酸複合体(F-PLA針)を開発した。In vitro実験では, 含有5-Fu濃度50%のF-PLA針の5-Fu放出は, 20日目で68.7%であった。このことからF-PLA針は, F-PGA針に比して高濃度の5-Fuを含有することが可能であると同時に, 徐放性の高いことがわかった。In vivo実験では, 5-Fu放出曲線はin vitro同様のパターンを示し, 18日目で77.3±2.10%であった。また血中5-Fu濃度は最高1.78±0.02μg/ml短できわめて低値を示した。ラットAH130固型腫瘍に対する制癌効果では, F-PLA針2本群において著明な効果が認められた。以上F-PLA針はF-PGA針に比して徐放性が高く, よりすぐれた徐放性制癌製剤と考えられた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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