人工臓器
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局所停滞性, 徐放性制癌材料
―基礎的検討と臨床評価―
杉立 彰夫高塚 雄一阪本 泉
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1985 年 14 巻 2 号 p. 684-687

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抄録

生体内でfibrinogenと反応し, 直ちに局所に制癌剤を含有するfibrin clotを形成することにより, 局所停滞性, 徐放性を有する制癌材料を開発した。これは, 吸収性gelatin材料(G)を担体として, Thrombin (T), Factor XIII (XIII), 制癌剤Adriamycin (ADM)の3者を凍結乾燥法で固定化して作成し, “G・T・XIII-ADM”とした。
本材料の局所的fibrin形成能は, 重量にして, 対象群の10倍以上, in vitroでのclotからplasma中へのADM放散は緩徐で, 15日間以上持続した。実験的TACEで, 本材料による塞栓は腫瘍内末梢の小動脈からおこり, 腫瘍に対しては, 先ず血管閉塞による阻血効果, 次いで腫瘍血管壁破綻によって放散されるADMの制癌作用の両面から抗腫瘍効果が発現されることが伺われた。臨床的には, 本材料を局所進行乳癌に対する術前TACEの塞栓材料として使用し, 組織効果と局所再発防止にすぐれた結果が得られた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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