抄録
左心バイパス中の血管拡張剤投与が血行動態に及ぼす影響について検討した。雑種成犬16頭を以下の3群に分けた。(1) tolazoline (Tz)投与群6頭, (2) PGI2 analogue (PG)投与群6頭, (3) isoproterenol (ISP)投与群4頭。それぞれを左房脱血し, 遠心ポンプで大腿動脈へ送血した。バイパス流量は薬剤投与前の最大流量のまま一定とした。Tzは2mg/kg, PGは1γ/kgはそれぞれ投与15分後, ISPは0.1γ/kg/minで投与し, 30分後をそれぞれ投与後値とし, 投与前後で比較した。Tzでは体血管抵抗(SVR), 肺血管抵抗(PVR)が有意に低下し, 右心拍出量(RV output)が有意に増加した。PGではSVR, PVRは低下傾向を示しRV outputは有意に増加した。ISPはSVR, PVRは低下し, RV outputは増加したが, いずれも有意ではなかった。以上より, 左心バイパス中の血管拡張剤の投与により肺血管抵抗が低下し, それによって, 右心拍出量が増加しうることが示唆された。