抄録
熱エンジンによる補助心臓が体内に放散する熱の影響を検討した。23-30wattsの熱により、体温が一過性に約1℃上昇したが、他に全身的な影響は認められなかった。表面温の高い部分に形成されたtissue capsuleは正常温のそれより厚い傾向があり、細少血管の内腔拡張および著明な血管新生像が特徴的であった。一方、血液接触面に形成された偽内膜の厚さを比較すると、術後1週間の時点では、加熱面の偽内膜(200±47μ)は正常温の偽内膜(548±133μ)より薄く、偽内膜形成遅延が認められたが、術後53日の時点では、両者に差はなかった。病理組織学的には、血液接触面温が42℃以下と考えられた部分の偽内膜には正常な細胞分布が認められたが、44℃以上の部分では細胞成分が著るしく減少していた。