1986 年 15 巻 2 号 p. 563-566
左心補助人工心臓(LVAD)駆動による右心機能におよぼす影響について, イヌ5頭ヤギ3頭をもちいた正常心での急性実験にて検討した. バイパス率を0%, 25%, 50%, 75%, 100%と変化させ, その時の血行動態を測定した. その結果バイパス率の増加に伴い, 右室拡張末期圧, 平均肺動脈圧, 脈拍は変化せず右室一回拍出量の上昇傾向, maxRVdp/dtの低下傾向を認めた. maxRVdp/dtを指標とする右室収縮能の低下を伴う右室一回拍出量の増加は, 左心補助による相対的右室容量負荷のためと思われる. この時右室拡張末期圧の上昇が認められなかったのは, 右室の良好な拡張性によるためと思われる. 従って, 良好な拡張能の保たれているような正常心では, LVAD駆動によって右心機能は抑制されないと考える.
今後, 右室の容量負荷の程度との関連を知るために容量計測等の方法も含めた検討, 更に不全心及び慢性実験による検討が必要と思われる.