1987 年 16 巻 3 号 p. 1270-1273
吸着体上への細胞の親和性の差に基づいた分離法である細胞吸着クロマトグラフィーは、短時間に大量の細胞を分取できる方法として有望である。我々は、分離対象である細胞に対する特異的な吸着親和性を有するとともに、吸着体との接触に伴う細胞の機能損傷を引き起こさないような細胞分離用新規吸着体の開発を推進した結果、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)/ポリアミングラフト共重合体(HA)が優れた性能を有することを見出した。HAを充填したカラムは、pH7.0-7.5の範囲でリンパ球亜集団中のB細胞を選択的に吸着し、その結果、5分以内にT細胞をカラム流出分、B細胞をカラム吸着分として分雄できることが明らかとなった。吸着分であるB細胞は簡単な攪拌操作で脱着回収が可能である。pH等の条件を変化させた実験より、この吸着体による分離はイオン性相互作用に基づくものであることが明らかとなった。