人工臓器
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循環の人工的制御の生体システム論的研究
―特に人工血管による大動脈瘤置換の循環系に及ぼす影響
前田 肇堀原 一森 有一
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1987 年 16 巻 3 号 p. 1294-1297

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抄録

人工血管移植を例にとり, 人工臓器が生体循環システムに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。上行大動脈―腹大動脈バイパスにおいて臨床例と動物実験で, 収縮期血圧の上昇, 拡張期血圧の低下, 脈圧の増大, 圧・流量波形の一致および著明な反射波の出現を認めた。従来の人工血管はGomplianceを欠いており, 駆出に対する入力インピーダンスを増すことになるため, 左室は後負荷増大に対し求心性肥大で対応する。拡張期血圧の低下は冠動脈血流量を減じ, 心仕事量の増大と相俟って虚血に陥りやすくなる。末梢側での脈圧増大や反射波の出現は, 大動脈壁の変性を助長し, 遮断端に瘤が存在すればその破裂を助長する。反面, 血圧の上昇や脈圧の増大が大動脈弓や頸動脈洞に及べば, 圧受容器のインパルスを増加させ, 延髄の血管収縮中枢を抑制して末梢血管抵抗を減じるように働く。試作したcompliant graftは従来の人工血管にみられた反射波やreversed flowを消失させた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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