1989 年 18 巻 1 号 p. 132-136
本研究は熱変性や化学変性を受けやすい細胞・組織あるいは生理活性物質と共存下で、生理機能や活性を損傷せずに包理あるいは接着できる医療用光硬化性樹脂を開発することを目的とした。分子設計したプレポリマーはポリオール両末端をキャップしたジアクリレートであり、ポリオールの分子量や組成、あるいは光重合開始剤や増感剤および重合性モノマーを選択することによって広範囲に物性を制御できた。ここで開発した光硬化性液状樹脂は、光照射によって水の存在下でも数分以内にゲル硬化物が得られ、硬化物は柔軟なエラストマーであり組織に対する密着も良好であった。これらの特徴を生かした医療分野への応用として外科用接着剤、創傷治癒母材およびドラッグデリバリー母材としての可能性を明らかにした。