1989 年 18 巻 1 号 p. 44-47
1984年以来われわれは進行癌に対する集学的治療の一つとして、完全埋め込み式vascular device device (VAD)を用いた担癌臓器に対する経皮的制癌剤選択投与と活性炭による制癌剤吸着除去の併用療法を試みてきた。これまで62例の進行癌患者に対してVADの植え込みを行い、60例に選択的化学療法を施行した。VAD開存率は6カ月87.4%、12カ月66.5%であり、平均6.2カ月(0-24カ月)薬剤投与が可能であった。この結果はVADが制癌剤投与経路として十分満足すべきものと思われる。また活性炭吸着を併用した高濃度制癌剤投与療法は21例に26回施行され、抗腫瘍効果は判定可能20例において奏効率60%、MR以上の腫瘍縮小効果は85%にみられ、少量投与群との間に有意な差をみとめた。担癌臓器を標的とした選択的癌化学療法にこうした人工臓器的手法が十分応用できるものと考えられる。