1990 年 19 巻 1 号 p. 168-171
弓部大動脈瘤手術における脳分離体外循環法の灌流条件に関する実験的研究を行ない、その臨床応用例6例に検討を加えた。
実験方法は雑種成犬5頭を用い、右房脱血、大腿動脈送血とする人工肺を含む完全体外循環回路を作成した。常温体外循環(流量100me/kg/分)からCore coolingにて直腸温20℃(流量50me/kg/分)まで冷却し、その際の各体温における総頚動脈の血流量を測定した。その結果総頚動脈の血流量は、20℃までの低体温体外循環では、体血流量に応じて、直線的に低下することを確認した。
脳分離体外循環を行なった臨床例は6例で、全例両側浅側頭動脈圧モニター下に、右腋窩動脈、左総頚動脈送血とし、その灌流量は体血圧と同等の圧を維持することを指標とした。6例に脳合併症はなく、1例を腎不全にて失なったが、他の5例は軽快退院した。